離婚協議書の書き方
離婚の際には、養育費、慰謝料、財産分与など、お金に関する取り決めをすることも多いはずです。口約束では後々トラブルになることがありますから、必ず離婚協議書を作成しておきましょう。ここでは、離婚協議書の作成方法や書き方について説明します。
離婚協議書作成のポイントを解説します!
離婚協議書の書式
離婚協議書には、決まった書式はありません。インターネットや書籍を参考に自分で作ってもOKです。
離婚協議書は自分で作ってもいい?
インターネットで入手した書式に当てはめて離婚協議書を作成してもかまいません。ただし、それぞれの夫婦の置かれている状況は違うので、離婚協議書はケースバイケースの検討をして作成するのが安心です。行政書士や弁護士に依頼すれば、状況をヒアリングした上で、オーダーメイドの離婚協議書を作成してもらえます。
何部必要?
通常は、同じものを2部作成し、双方が署名捺印した上で、1通ずつ持っておきます。
離婚協議書は手書きでもいい?
離婚協議書を手書きしても、特に問題はありません。ただし、改ざんされてしまったり、消えてしまったりする心配がありますから、少なくとも鉛筆書きはやめましょう。
離婚協議書に書く事項
一般に、離婚協議書や公正証書に盛り込んでおくべき事項としては、次のようなものがあります。
当事者の氏名
誰と誰が約束するのかを明確にするために、夫婦ともフルネームを記載します。
(例)夫・山田太郎(以下「甲」という)と妻・山田花子(以下「乙」という)は、本日協議離婚をすることに合意した。
子どもの名前、親権者
親権者は離婚協議書で定めるのではなく、離婚届に記載して定めることになります。
ですが、通常は離婚協議書に養育費など子どもに関する条項を入れますから、子ども全員の名前と、どちらが親権者になるのかを記載します。
(例)甲乙間の未成年の長男・一郎(○○年○月○日生、以下「丙」という)及び長女・愛子(○○年○月○日生、以下「丁」という)の親権者をいずれも母である乙と定める。
養育費
養育費は、通常は毎月払いにし、支払期間、支払日、支払金額、支払方法を記載します。振込の場合の手数料をどちらが負担するかについても書いておきます。
(例)甲は乙に対し、丙の養育費として、2018年5月から2026年3月まで、毎月末日限り、金5万円を、乙の指定する金融機関の預金口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は甲の負担とする。
慰謝料
慰謝料の支払いがある場合には金額や支払方法などを記載します。
分割払いのときには、期限の利益喪失条項(分割金の支払いを怠ったら残金を一括請求できる旨)を入れることもあります。
なお、離婚までに慰謝料の支払いが完了している場合には、敢えて記載しないこともあります。
ただし、金額によっては贈与税課税のリスクがあるため、離婚の際の慰謝料であることの証拠を残すために、支払済みでも記載しておいた方がよいでしょう。
(例)甲は乙に対し、本件離婚に伴う慰謝料として、金200万円の支払義務があることを認め、これを次のとおり分割して、乙の指定する金融機関の預金口座に振り込んで支払う。
財産分与
不動産や預貯金、自動車などの財産分与がある場合には、その内容を記載しておきます。
不動産については、登記事項証明書(登記簿謄本)どおり記載し、登記手続きにかかる費用負担についても決めて書いておきましょう。
家財道具などは全部書いていればキリがないため、離婚までに引き渡しをすませておき、残っているものについては文句を言わない旨を記載するなどして処理します。
(例)甲は乙に対し、本件離婚に伴う財産分与として、甲乙共有の下記不動産の甲の持分全部を分与することとし、財産分与を原因とする所有権移転登記手続きをする。但し、登記手続き費用は甲の負担とする。
面会交流
別居親と子どもとの面会について書きます。遠方になる場合には、交通費などの負担をどうするかも書いておきます。
(例)乙は甲に対し、甲が丙と月1回程度面会交流することを認める。面会交流の具体的な日時・場所・方法等は、甲と乙が、丙の意思を尊重し、かつ丙の福祉に十分配慮して協議決定する。
通知義務
離婚後も金銭の支払いが残る場合には、連絡先がわからなくなれば困るため、住所変更等を通知する旨記載しておきます。
(例)甲は養育費支払期間中、住居所、連絡先、勤務先を変更したときは、その旨を直ちに通知する。乙が住居所、連絡先、預金口座を変更したときは、直ちに甲に通知する。
合意管轄
離婚後にトラブルになって裁判所で解決を図る場合、どこの裁判所にするかの管轄についてあらかじめ合意しておくことも可能です。
離婚後遠方に離れてしまう場合などには、記載しておいた方がよいでしょう。
(例)甲及び乙は、本契約の内容に関する紛争について、乙の住所地を管轄する裁判所を第一審の管轄裁判所とすることに合意した。
清算条項
離婚協議書に記載したもの以外の債権債務はないことを明記し、将来のトラブルに備えます。
(例)甲及び乙は、本件離婚に関し、以上をもって円満に解決したことを確認し、今後財産分与、慰謝料等名目の如何を問わず、相互に財産的請求をしない。また、甲及び乙は、本契約に定めるほか、相互に何らの債権債務がないことを確認する。
その他記載しておいた方がよい事項
上記以外に、ケースによっては、下記のような事項を離婚協議書に盛り込んでおいた方がよいことがあります。
・子どもの進学時の具体的な費用負担
・子どもの塾や習い事の費用負担
・子どもの携帯料金の負担
・子どもの園・学校行事への参加
・ペットの世話やペットにかかる費用の負担
・離婚後に請求が来る固定資産税や自動車税の負担
離婚協議書の署名・捺印
離婚協議書は、夫婦それぞれが署名し、印鑑を押しておきます。名前まで印刷してしまい、印鑑だけ押しても無効ではありませんが、後で偽造したなどと言われてしまうリスクがあります。自筆で署名し、実印を押しておくのがいちばん安心です。
離婚協議書を公正証書にする場合の注意点
離婚協議書を公正証書にする場合にも、記載する事項は通常の離婚協議書と大きくは変わりません。ただし、離婚公正証書の場合、通常は公正証書が可能な形にしますから、「本証書記載の金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する」という強制執行認諾約款が入ります。
強制執行を意識した記載にする
公正証書では、お金の支払について、強制執行を意識した記載をする必要があります。支払時期や支払金額が明確になっていなければ、強制執行はできません。「大学卒業まで養育費を支払う」「退職金の2分の1の額を支払う」などの記載では、具体的な支払期間や支払金額がわからないため、せっかく公正証書を作成しても、強制執行という手段がとれないことがあります。
自分で公証役場に依頼するときには、盛り込んでほしい事項を公証人に伝えて、適切な形に仕上げてもらうことになります。この場合、敢えて言わなければ、強制執行まで考慮した記載をしてもらえないことがありますから注意してください。
行政書士は公正証書の原案を作成します
行政書士が公正証書の依頼を受けた場合には、公正証書への具体的な記載の仕方まで考えた上で原案を作成し、公証人に最終的な公正証書作成を依頼します。もちろん、事前に依頼者に細かなヒアリングをしますから、盛り込むべき事項を落としてしまうということもありません。公正証書作成は、行政書士を通して依頼することをぜひご検討ください。
まとめ
離婚協議書を作成するときには、離婚後にどんなトラブルが起こり得るかを考え、リスクを予防できる記載をする必要があります。それぞれの夫婦によって、離婚後のリスクも異なってきます。自分で離婚協議書を作成したいとお考えの方も、一度専門家に相談してアドバイスを受けるのがおすすめです。
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