離婚ってどんな場合にできる?法律で決められている離婚原因について

「今度何かあったら離婚する」「子どもが独立したら離婚する」などと、将来の離婚を心に決めている人も多いと思います。ですが、いざ自分が「離婚したい!」と思ったときでも、必ず離婚ができるわけではありません。ここでは、そもそも離婚はどんな場合にできるのかについて説明します。

夫婦共に離婚に合意すれば離婚はできる

スムーズに協議離婚できるとは限らない

最も簡単に離婚する方法は、離婚届を出して協議離婚する方法です。国によっては裁判所を通さなければ離婚できないところもありますが、日本では夫婦共が署名捺印した離婚届を役所に提出すれば、それだけで離婚ができます。ですから、離婚はその気になれば簡単にできるもののように錯覚している人が多いのも事実です。

けれど、いざ離婚を考えたとき、相手に離婚届に署名捺印させるということが、思いのほか難しいことを実感する人も多いはずです。相手が自分と同じように「離婚したい」と思っているとは限らないからです。結婚も離婚も自分だけの問題ではなく、相手のある問題ですから、原則的には両方の意思が一致しなければできません。結婚のときには当然ながら双方の意思は一致していますが、離婚はそうとは限らないのです。

相手の意思に反して勝手に離婚届を出したらどうなる?

相手が離婚に同意しないとき、離婚届に勝手に相手の署名捺印をして役所に出すことを考える人も少なからずいると思います。しかし、一方の意思に反して出された離婚届は無効です。それだけでなく、これをやってしまうと犯罪にもなってしまいます。

ちなみに、何かあったときにすぐに離婚できるよう、お互いが署名捺印した離婚届を持っているという話もよく聞きます。過去に離婚届に自分が署名捺印していても、実際に役所に出す時点で離婚の意思がなければ、離婚はやっぱり無効です。離婚したい側は、「前に離婚届を書いてもらっているからいつでも出せる」と安心しない方がいいでしょう。

実際には、一方に勝手に離婚届を出された時点でもうあきらめる人もいるでしょう。敢えて異議を申し立てなければ、そのまま離婚は有効になります。ですが、違法な手段を用いて離婚を強行突破するようなことは、お互い後味が悪くなるだけですから、やめておきましょう。

協議離婚できないなら「離婚原因」が必要

話し合いで離婚ができない場合、合法的に離婚しようと思ったら、「離婚原因(離婚事由、離婚理由)」というものが必要になります。離婚原因は、民法770条1項に定められている次の5つになります。5つのうちいずれかの離婚原因があれば、裁判所を通して離婚することが可能になります。

1. 配偶者に不貞な行為があったとき

不貞行為と言えば、浮気のことというのは、皆さんよくご存じと思います。相手が浮気した場合には、こちらから一方的に離婚を要求することができ、相手が認めなくても最終的に裁判で離婚ができます。

ただし、1回でも浮気すればすぐに離婚できるというわけではありません。離婚が認められるには、継続的に不貞行為が行われている必要があります。

また、裁判で離婚するには、不貞行為が継続的に行われている証拠をとっておかなければなりません。証拠はある程度自分でも集められることがありますが、プロの探偵業者に依頼した方がよい場合もあります。

浮気の証拠の集め方

2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき

民法では、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」旨が定められています(752条)。悪意の遺棄とは、正当な理由なく夫婦の同居・協力・扶助義務を果たさない場合をいいます。

たとえば、以下のようなケースが悪意の遺棄に該当する可能性があります。

・働いている夫が生活費を渡さない

・一方が家出して戻ってこない

・元気な夫が働かない

・専業主婦の妻が全く家事をしない

3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき

配偶者が行方不明になり、生きているのか死んでいるのかわからない状態が3年以上続いている場合です。単に連絡がとれないだけの状態は該当せず、警察へ捜索願を出している必要があります。証拠としては、捜索願の受理証明書などを提出することになります。

なお、裁判所を通して離婚をするには、裁判の前に調停を経なければならない「調停前置主義」という原則があります。しかし、相手が行方不明の場合には調停もできませんから、いきなり裁判ができることになります。

ちなみに、生死不明の状態が7年以上続いていれば、離婚裁判ではなく、失踪宣告を申し立てることもできます。失踪宣告とは、行方不明の人について、法律上死亡したものとみなす制度です。失踪宣告を受けた場合には、相手は死んだことになり、相続が発生します。また、相手が生きていた場合には、失踪宣告が取り消され、婚姻が復活することになります。

4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき

強度の精神病かどうかは、正常な夫婦生活ができないくらいの重い精神障害といえるかどうかで判断されます。統合失調症や躁うつ病などは、状態によっては強度の精神病と認められる可能性があります。アルツハイマー型認知症は、ここに該当しなくても、次の5に該当する可能性があります。

ただし、病気の配偶者をほったらかしにし、見捨てるような形で離婚するのは好ましくないため、看護や介護を誠実に行ってきた経緯や、配偶者の将来の心配がないことなどが要求されます。

5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

1~4に該当しない場合でも、それと同レベルの問題と判断されれば、離婚ができます。DVやモラハラ、借金、性格の不一致なども、ここに該当して離婚できる可能性があります。実際には、様々な事情を考慮し、夫婦関係が実質的に破綻していれば、離婚が認められることになります。

離婚原因がある場合の離婚の手順は?

上に書いた離婚原因があれば、裁判所を通して離婚ができます。ただし、明らかに離婚原因がある場合でも、必ず裁判所を通さなければならないという意味ではありません。

離婚原因があれば、「裁判になってもこちらが勝ちますよ」ということを理由に、相手と交渉ができます。相手の方も、明らかに勝ち目がないとわかば、協議離婚に応じる可能性が高くなります。

やはり協議離婚が難しい場合には、上にも書いた調停前置主義により、家庭裁判所に調停を申し立てるところから始める必要があります。調停で相手が応じれば調停離婚ができ、調停が不成立になればいよいよ裁判ということになります。