養育費の一括払いと分割払い

養育費は、子どもにかかる毎月の生活費として、月々必要な額を支払ってもらうケースが多いと思います。
しかし、養育費は必ず毎月払いにしなくてはいけないわけではなく、一括払いにしてもかまいませんし、回数を指定して分割払いにしてもかまいません。ここでは、養育費の一括払いや分割払いについて説明します。

養育費一括払いのメリット・デメリットとは?

養育費の一括払いとは

養育費の一括払いは、離婚の際に、子どもが成人するまで(または大学卒業まで)にかかる養育費を全額払ってもらう方法です。養育費一括払いは、支払う側の手元に払えるだけの現金がなければ困難ですから、難しいことも多いと思います。ですが、養育費一括払いが可能であれば、一括払いすることで双方にメリットがあります。

養育費一括払いのメリット

養育費を一括払いすることで、支払う側は、長期間にわたる支払いの負担がなくなります。また、受け取る側は、支払う側の再婚、失業、死亡などの事情で途中で養育費が払われなくなるリスクをなくすことができます。離婚後はお互いかかわりたくないという場合にも、養育費を一括払いすることにより関係を清算することができます。

養育費一括払いのデメリット

養育費一括払いには、デメリットもあります。それは、受け取る側が養育費を使い込んでしまい、子どもが成人する前に足りなくなる可能性があるということです。現実に養育費が足りなった場合、親であれば支払う義務がありますから、一括払いは支払う側にはリスクがあります。

また、養育費の一括払いには、親子のつながりを維持しにくいというデメリットもあります。毎月養育費を払ってもらえば、離婚後も親子のつながりを維持しやすくなります。たとえば、子どもが別居親に毎月養育費のお礼の電話やメールをすることで、離れていても自分のことを支えてくれているという感謝の気持ちが生まれやすくなります。しかし、一括払いにすれば、支払う側も「もう責任は果たしたのだから関係ない」と思ってしまうことがあり、離婚後の交流がなくなってしまうことがあります。

その他に、毎月払いの場合には状況に応じて養育費の金額を増減できますが、一括払いでは離婚時を基準とした額で支払うことになり、本来払うべき額よりも多くなったり少なくなったりすることがある点もデメリットと言えます。

養育費一括払いが無理なら分割払いという方法も

養育費の分割払いとは

養育費の分割払いは、子どもが成人するまで(または大学卒業まで)の養育費の総額を出したうえで、短期間の分割払いにする方法です。たとえば、子どもが大学卒業するまであと10年あるという場合でも、10年分の養育費を5年で支払ってしまう取り決めをしてもかまいません。

養育費分割払いのメリット

養育費を短期間の分割払いにすれば、支払う側は、長期間養育費に拘束されずにすみます。受け取る側にとっても、養育費支払い途中で相手が再婚して養育費を減らされたり、相手が亡くなって養育費自体もらえなくなったりするリスクを減らせるメリットがあります。

一般に、養育費というのは離婚して間もない頃はきちんと払われていても、離婚後年数が経つにつれ払われなくなるものです。受け取る側は、必要な養育費をできるだけ前倒しでもらっておいた方が安心感を得られます。養育費の一括払いが難しい場合には、できるだけ短期間で分割払いしてしまう方法を検討してみましょう。

離婚協議書・公正証書を作っておく

養育費を一括払いするときには、いつからいつまでの分をどれだけ支払ったという証拠を残しておく必要があります。支払う側がせっかく養育費を一括払いしても、受け取る側に「受け取っていない」と言われてしまう可能性がないわけではありません。領収書を作成するのでもかまいませんが、他の取り決め事項と合わせて離婚協議書を作成しておくのが安心です。

また、養育費を分割払いするときには、公正証書を作成しておくのがおすすめです。養育費を短期間で分割払いする取り決めをしても、支払いがきちんと行われる保証はありません。いつからいつまでの分をどのような形で支払うのかということを公正証書に明記することで、約束どおり支払われなかったときの強制執行も可能になります。