収入の少ないシングルマザーにとって心強い「児童扶養手当」とは
子どもを連れて離婚し、シングルマザーになる女性の方は多いと思います。
今の日本で、女性が一人で働きながら子どもを育てていくのは大変です。
シングルマザー向けの支援制度も用意されていますので、利用できるものは活用しましょう。
ここでは、シングルマザー向けの代表的な支援制度である「児童扶養手当」について説明します。
(1) 児童扶養手当とは
「児童扶養手当」は、「母子手当」とも呼ばれるもので、法律にもとづきひとり親家庭(母子家庭、父子家庭)に支給される手当です。児童扶養手当は住んでいる市町村から支給されますが、国の制度であるため、支給条件や支給金額は全国共通です。
(2) 何歳までの子どもがいればもらえるの?
児童扶養手当がもらえるのは、子どもの18歳の誕生日の次の3月31日までです。
つまり、高校生までの子どもがいれば、児童扶養手当を受給できます。
(3) いくらもらえるの?
児童扶養手当の金額は一律ではありません。全部支給の金額として上限が定められており、所得の金額に応じて支給額の一部が停止になるしくみになっています。所得が一定額を超えると、全部停止となり、手当を受給できません。
平成30年8月現在、児童扶養手当の1か月あたりの支給額は、次のようになっています。
対象児童の数 | 全部支給の場合 | 一部支給の場合 |
---|---|---|
1人の場合 | 42,500円 | 42,490円~10,030円 |
2人目の加算額 | 10,040円 | 10,030円~5,020円 |
3人目以降の加算額 | 6,020円 | 6,010円~3,010円 |
(4) 年収がいくらくらいだと児童扶養手当がもらえるの?
児童扶養手当がもらえる所得の限度額は、扶養親族の人数(子どもの数とは必ずしも一致しません)や同居している家族の所得などによっても変わってきます。なお、所得とは年収ではなく、年収から必要経費(会社員などの場合には給与所得控除額)や社会保険料等を差し引いた金額です。
たとえば、扶養親族の数が1人で実家に住んでいるのでない場合、所得230万円(年収目安365万円)以下であれば、多少なりとも児童扶養手当がもらえることになっています。
ただし、児童扶養手当の計算の際の「所得」には受け取った養育費の8割も含まれます。母親自身の収入が少なくても、父親から養育費をたくさんもらっていれば、児童扶養手当は受給できないことがあります。
一般には、正社員として働いており、父親から標準的な養育費をもらっている状況なら、ほとんどの場合児童扶養手当の受給対象にはならないと考えてよいでしょう。
たとえシングルマザーになっても、子育てに必要なお金は自分で働いて稼ぐか、父親側から養育費として受け取るべきというのが、国の考え方です。それでもどうしても足りない場合のみ、国が児童扶養手当という形で補填してくれるのです。「シングルマザーになっても児童扶養手当があるから安心」というわけでは決してありませんので、注意しておいてください。
(5) 児童扶養手当はいつの収入を基準に計算するの?
児童扶養手当は、前年度1月から12月の所得を基準に、今年度の8月から翌年度の7月までの分が支給されます。たとえば、2018年の9月に離婚届を出し、9月中に児童扶養手当の申請手続きが完了した場合、2018年の9月から2019年の7月までは、2017年の年収にもとづき計算された手当が支給されるということです。
離婚するまで専業主婦で、離婚をきっかけに働き始めた人などは、前年度は収入ゼロということがあります。前年度はまだ離婚してませんから、養育費も当然ありません。つまり、離婚した最初の年は、手当の額が多くなります。ただし、2年目以降は減ってしまいますから、注意しておきましょう。
離婚した最初の年は、実際引っ越しなどでお金もかかります。手当が多くもらえるとしても、生活の基盤が整うまでの準備資金と考えておくべきです。離婚後の生活設計を立てるときにも、児童扶養手当をアテにするのではなく、できるだけ自分の勤労収入と養育費で生活できるようにしておきましょう。
(6) 児童扶養手当はどうやったらもらえるの?
児童扶養手当は、離婚したら自動的に支給されるものではありません。受給を希望する場合には、市町村役場の窓口で、申請手続きをする必要があります。
児童扶養手当の申請手続きの際には、提出しなければならない書類もあります。必要になる書類は、住んでいる市町村や離婚後の状況によって違います。たとえば、戸籍謄本や住んでいる家の賃貸借契約書などが必要になることがあります。
児童扶養手当の申請は、離婚届を出した後でなければできません。また、支給開始は、申請手続きが完了した翌月からになります。申請手続きが遅れても、離婚時に遡って手当がもらえるわけではありません。
離婚届を出した後、書類を用意するのに時間がかかると、支給開始が1か月遅れてしまうこともあります。支給開始が1か月遅れれば、全部支給の人なら約4万円損してしまいます。
児童扶養手当申請の必要書類等は、離婚届を提出する前に役所に確認し、離婚後すぐに手続きできるようにしておきましょう。通常、役所では児童扶養手当の事前相談を受け付けていますので、離婚が決まったら速やかに相談に行くことをおすすめします。
(7) 児童扶養手当はいつ振り込まれるの?
上にも書いた通り、児童扶養手当は毎年8月から翌年7月までが1つの年度となり、1年間は毎月同じ金額が支給されます。ただし、毎月振込されるわけではなく、振込日は年に3回で、4か月分が一度に振り込まれます。決して前払いではありません。4か月ごとに、後払いで振込されます。
具体的には、振込月は次のようになります。
8月分~11月分→12月に振込
12月分~3月分→4月に振込
4月分~7月分→8月に振込
たとえば、6月末に離婚届を出し、児童扶養手当の申請が7月になった場合、支給開始は8月からになりますが、最初の振込は12月(通常10日頃)になります。離婚届を出してから初めて児童扶養手当を受け取るまでに、5か月以上かかってしまうこともあるということです。
前年度収入ゼロだった人は、全額もらえるからと、最初から児童扶養手当をアテにしてしまうことがありますが、児童扶養手当は離婚後すぐにもらえるものではありません。実際に振込されるまでは相当時間がかかると認識しておき、生活費が足りなくならないように注意しておきましょう。
(8) 児童扶養手当の現況届とは?
児童扶養手当は、所得をもとに毎年見直しされます。毎年8月に受給者が役所に「現況届」を出す形で、更新手続きを行います。前年度の所得のデータは通常は役所の方で参照できますから、受給者は現況届で、受け取った養育費の額を申告します。
養育費の申告については、役所から「養育費等に関する申告書」という書面が郵送されてきますので、それに前年度受け取った養育費の金額を記入して持参します。ちなみに、通帳のコピーなどを添付する必要はなく、金額のみの自己申告になります。
現況届は郵送ではできず、直接役所に行かなければなりません。8月は平日も休みを取りやすい時期ですが、それはみんな同じですので、だいたい役所は混雑しています。面倒ですが、役所に出向かなければ手当が受け取れなくなることがありますので、時間を作って役所に行きましょう。
なお、8月に提出した現況届をもとに、10月頃に支給金額が決定し、決定の通知が来ます。決定した額で、8月分から翌年7月分までの手当が振込されることになります。
(9) 5年を超えて手当をもらうならさらに手続きが必要
児童手当はいつまでもだらだら受け取れるものではありません。児童手当の支給開始月から5年を経過した場合や、支給要件に該当した月から7年を経過した場合には、手当の一部が制限されるというルールがあります。なお、この場合でも、「ちゃんと働いています」とか「病気で働けません」ということを証明する書類を提出して手続きすれば、従来通り手当を受給できます。
国は「病気などの事情がない限り、ちゃんと働いて、手当を受給しなくても生活できるようにしてくださいよ」というスタンスです。働けるにもかかわらず手当をアテにして働こうとしない人には、お金を払ってくれなくなるのです。国(自治体)は、我々にお金を払うことについては、非常にシビアです。
海外には、子どもは高校や大学まで無料で行かせてもらえる国もあるようですが、日本はひとり親家庭であっても、国は簡単にお金を払ってはくれないのが現状です。離婚が増え、母子家庭の貧困は社会問題になってますが、国の支援体制がすぐに変わることは期待できません。現状では、自助努力が欠かせないということです。